- 不動産賃貸
2026/05/07
ゴムが建物を守る時代——制震という選択肢を、いまこそ賃貸オーナーは知っておくべきだ

5月6日は「ゴムの日」だという。語呂合わせの記念日とはいえ、思わず立ち止まってしまう。輪ゴムを一本手に取ってみてほしい。引っ張っても、曲げても、元に戻る。この「しなやかに力を受け流す」という性質が、今まさに不動産の世界で真剣に語られているのだから、記念日も侮れない。
かつて、建物の地震対策といえば「耐震」一択だった。壁を厚くし、柱を太くし、とにかく揺れに耐えさせる。それ自体は正しい発想だが、2024年1月に能登半島を襲った地震は、築年数を重ねた木造アパートやRC造の古いマンションを数多く傷つけ、改めて日本の賃貸ストックが抱える脆弱さを白日のもとに晒した。入居者の不安は数字にも表れており、物件選びで「耐震性能」を優先するという回答は、地震後の調査で明らかに上昇している。オーナーがこの変化を気づいていないとすれば、それは大きな経営リスクといえる。
そこで再注目されているのが「制震」という考え方だ。耐えるのではなく、いなす。ゴム素材を応用した制震ダンパーや制震パネルが、既存の木造賃貸住宅にも後付けで設置できるようになっており、工期は数日程度で済むケースも多い。大掛かりな仮住まいの手配も不要で、入居者が住んだままの「居ながら施工」に対応した製品も増えている。費用は工法や建物規模によって幅があるが、従来の耐震補強と比べると格段にコストを抑えられる選択肢が出てきた。さらに、各自治体が設けている耐震改修補助金の対象に制震工事が含まれるケースも増えており、2025年以降はその活用がより一般化すると見られている。
ただし、ここで強く申し上げたいことがある。この手の工事を、安易に「安いから」「工期が短いから」という理由だけで発注するのは危険だということだ。
建築業の現場に長く携わってきたプロが口を揃えて言うのは、「制震部材の効果は、設置位置と建物のバランスで大きく変わる」という事実だ。ダンパーをどこに、何本、どの向きで設置するかは、その建物の構造計算と切り離せない。素人判断はもちろん、制震製品の販売だけを行う業者に設計まで任せることも、本来は避けるべきだ。構造図や既存の耐震診断結果を正しく読み解き、建物全体への影響を判断できる建築の専門家が関与してこそ、制震工事は初めて意味を持つ。
実際に筆者が耳にした話では、築30年超の木造アパートに制震ダンパーを自己判断で設置したオーナーが、後になって建築士に「1階と2階の壁量バランスが取れておらず、かえって特定の階に力が集中しやすくなっている」と指摘されたケースがある。施工業者が悪意を持っていたわけではない。ただ、構造的な視点が欠けていた。制震という技術は確かに優れているが、それを生かすも殺すも、建築の知識と経験にかかっている。
翻って、オーナーの立場で考えてほしい。能登半島地震以降、入居者は確実に「この建物は大丈夫か」という目で物件を見るようになった。逆に言えば、耐震・制震への取り組みをきちんと行い、それをしっかりPRできている物件は、入居者の安心感という目に見えない資産を積み上げていることになる。防災対策は「コスト」ではなく、賃貸経営の「競争力」になる時代に入ったと認識すべきだ。
しかし現実として、構造診断から制震設計、施工、補助金申請の手続きまでを一人でこなせるオーナーはほとんどいない。管理会社に相談しようにも、建築的な専門知識まで持ち合わせている担当者がいるとは限らない。これが今の賃貸経営の現場が抱える、正直な限界だ。
だからこそ、地域の実情と建物の個別事情を知り抜いたプロの存在が欠かせない。補助金の仕組みから構造診断、施工まで一気通貫で動ける建築の専門家が、いま最も求められている。
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